五人姉妹(菅浩江著)

ジャンル:SF

 なんか生温い作家になっちまったな、と思う。

 昔っからテクニックの泣かせに走り過ぎたり本筋と関係のない和物描写に拘泥して構成壊したりしてた人だけどそう言う悪いところが随所で噴出している。

 『雨の檻』ではそういう破綻を圧倒的な怒りと悲しみのベクトルで押し流す事が出来ていたがゆえにあまり目立たなかったのだけれど、ね。

 ただただ理由もなく生き難さを覚えている人間への愛情はどっかに行ってしまい、親子の葛藤ネタだけはまだ切れ味を失いきっていない辺りには思わず様々な邪推をかましたくなってしまいますよ。

 全体に人生に満ち足りた雰囲気が溢れていて、それってやっぱSFとしては問題なんじゃないか、と思う。

 ベストは技術社会での祈りのありかを追求した「秋祭り」、ワーストはネタのSF的展開がまるで弱い「ホールド・ミー・タイト」か「箱の中の猫」、あるいは文章にまるで滋味のない「五人姉妹」かな。


早川書房 2002年1月発行