2002-10-01から1ヶ月間の記事一覧

星の、バベル(新城カズマ著)

ジャンル:SF やったぜ本気だ新城カズマすげーっ! 新城カズマが凄い、なんて事はライトノベルを読んできた人間ならば誰もが知っている事なのであって、今更くだくだしく述べるのもおこがましい。上巻が出た時に『導きの星』の話はしても『星の、バベル』…

我が館にさまよえ虚像(秋田禎信著)

ジャンル:ファンタジー 全編にクライマックス直前の緊張感と興奮が溢れたシリーズ18巻。 《魔術士オーフェンはぐれ旅》とはつまりどんな話だったのか、を、怒涛の勢いで伏線を回収しながら提示する。それは十年近くオーフェンたちとはぐれ旅を続けてきた…

クリスマス・テロル invisible×inventor(佐藤友哉著)

ジャンル:ミステリ S-neryの話をして(『フリッカー式』)、桑島法子の話をして(『エナメルを塗った魂の比重』)、青春の話をして(『水没ピアノ』)、私生活の話をしたら(「世界の終わり」)、あとは小説の話しか残っていないだろう。 そんなわけで、友…

天剣王器(海羽超史郎著)

ジャンル:ファンタジー 電撃ゲーム小説大賞第七回選考委員奨励賞受賞作。 「魔導」「魔術」「魔法」と区分したがるのは〈オーフェン〉ですか、とか〇〇を要する環境制御機構って同じ第七回のアレと被ってますね、とか意地の悪いことを思ってみたりもしたけ…

チョウたちの時間(山田正紀著)

ジャンル:SF まずは入り組んだ構成の小説である。新介の帰郷、マヨラナの失踪、ハイデンベルグとボーアの確執、純粋時間での争闘、通常時間内での人類の未来。これだけのエピソードとプロットをこのページ数に詰め込んでいるのだから、構成は入り組まざる…

並列バイオ(秋口ぎぐる著)

ジャンル:SF 第十回富士見ファンタジア小説大賞審査員特別賞受賞作。 秋口ぎぐるの作風を一言で言えば、小洒落ている、というあたりになるだろう。 このデビュー作もそんな話だ。 「巨人機関」「MS」「進化論者」などの造語とガジェットは確かに格好良…

浪漫探偵・朱月宵三郎2 無謬邸は暁に消ゆ(新城カズマ著)

ジャンル:ミステリ シリーズ第二作。 まあ二巻ともなればキャラクターにも作品のノリにも大分慣れて来ているわけで、一巻初読時に感じたような違和感はない。乃乃子もえー。部長もえー。珠紀もえー。 相変わらずの反則臭い叙述まがいのトリックも綺麗に決ま…

パラサイトイブ(瀬名秀明著)

ジャンル:SF 先に言っておけば、これはSFではない。 ホラーでもないけど。 何故SFではないのかは置くとして何故ホラーではないのかと言えば、それは全くもって恐くないからだ。単純に感覚的な、描写上・シチュエーション上の問題だけではない。そちら…

ブロークン・フィスト 戦う少女と残酷な少年(深見真著)

ジャンル:ミステリ ミステリの本義は推理であり、そしてその要は勿論驚天動地、空前絶後の大トリックだ。 その一点さえ神懸かっていれば、たとえ他がどんなにヘタレていようと本質的にはかまわない。 たとえ作者のマニフェストとは裏腹にヒロインが守られて…

インフィニティ・ゼロ 冬〜winter snow〜(有沢まみず著)

ジャンル:ファンタジー 第八回電撃ゲーム小説大賞銀賞受賞作。 読み進めるにつれてストーリーが進む感覚がまるでない。 それは、事態が完全に主人公の視界外で進行し、それが主人公の眼前に現われた時には主人公の内面に影響を与えるのに、その解決と主人公…

デジャ・ビュ(桜井亜美著)

ジャンル:SF 出だしは良いんだよ、出だしは。 ちょっとベアっぽい退廃未来なカンジで。 主人公がなんか精神を病んでるのもベスターとかを連想する事で十分燃えられるし。 でも、な。 違うんだよ。違うんだ。SFってのはそうじゃないんだ。 何がどうそうで…

悪魔のミカタ 魔法カメラ(うえお久光著)

ジャンル:ミステリ 第八回電撃ゲーム小説大賞銀賞受賞作。 ウェルメイドではある。 ルールに縛られた魔法を用いたハウダニットがきちんと出来ているし、犯人を罠にかけるための誘導尋問もロジカルファンタジーの教本通りだ。 ただ、二人目の探偵の動機がや…

大唐風雲記 洛陽の少女(田村登正著)

ジャンル:SF 第七回電撃ゲーム小説大賞大賞受賞作。 安禄山の乱直後の中国を舞台に、タラス河畔の戦いまで絡めて童女姿の則天武后やら豪傑な楊貴妃やらに見習い方士が振り回されると言うコンセプトは中々に面白い。歴史改変小説の醍醐味たる歴史的事象の…

シガレット・ヴァルキリー(吉川良太郎著)

ジャンル:SF 最高傑作。 この人の最大の欠点は、小説として綺麗に纏まりすぎている点にある。例えば野阿梓やディレイニーが良くやるような、ストーリーの裏側で思弁を展開するタイプのSFは、小説の表層を敢えて壊しておく事によってその裏側を仄見せるべ…

かめくん(北野勇作著)

ジャンル:SF 第二十二回日本SF大賞受賞作。 さて。何から書き出したものか。 まずは解題めいた事から始めるとすれば、甲羅とは文化/ミームの謂いであろう。それはパラダイムとして認識の枠組みを規定すればこそ、「カメというものは自らの甲羅の中から…

NHKにようこそ!(滝本竜彦著)

ジャンル:その他小説 前作とテーマ的には通底しあうデビュー第二作。 前作の幻想性は慎重に排除され、リアリズムベースで進むジャンル純文学としてこの作品は成立している。 だが、同世代に共通する体験が失われてしまった現代、経験性とそれへの共感で読者…

妻の帝国(佐藤哲也著)

ジャンル:SF 内容は見ての通り、としか言いようがない。 民衆感覚による民衆独裁の理念を掲げた国家の、誕生からその理念の先鋭化により崩壊するまでを描いた小説である。 それこそ作者がそこからの影響に言及しているオーウェルの『1984年』でありソ…

ΑΩ(小林泰三著)

ジャンル:SF 例の機関銃作品(爆)。 手の汚いふとっちょ(爆)のようなイデオロギー的義憤は全く感じなかったけれど、『かめくん』の完璧な出来と引き比べたらまあ敵わない水準の作品ではあると思う。前半のインパクトに比してそれを受ける後半の展開が…

フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人(佐藤友哉著)

ジャンル:ミステリ バーカバーカ。おめミステリって読んだ事あるか? なんだよこのクソな構成。まあそれはいいよ。19しゃいでがんばりまちたねー。ボクちゃんえらいでしゅね ー。今度は伏線もはってみまちょうねー。ていうかさ、おめ『東京星に、いこう』…

五人姉妹(菅浩江著)

ジャンル:SF なんか生温い作家になっちまったな、と思う。 昔っからテクニックの泣かせに走り過ぎたり本筋と関係のない和物描写に拘泥して構成壊したりしてた人だけどそう言う悪いところが随所で噴出している。 『雨の檻』ではそういう破綻を圧倒的な怒り…

夜陰譚(菅浩江著)

ジャンル:ファンタジー なんでこのCGIホラーってないの? まあいいっすわ。 きらきらしい描写の密度が高い分『五人姉妹』よりは大分マシ。 ただ、この作者の主人公との心理的距離がべったりである事を前提にした湿度高く粘っこい文章で、とにかくキャラ…

地球・精神分析記録(山田正紀著)

ジャンル:SF 山田正紀はもちろん日本SF界を代表する長編型作家だが、中短編も実に器用にこなす事はもっと知られてもいい。いや、むしろ中篇においてこそそのシャープな筆致は最大限の冴えを見せる、と言ってもいい。 長編とは深さ、短編とは切れが勝負の…

ジャグラー(山田正紀著)

ジャンル:SF 困ったものである。 パンキッシュな、オカルトが現世へと噴出した未来世界を、91年の段階で(そう、なんと『ブラックロッド』に五年も先立って!)描いていた事は、やはり流石ではあるのだ。無論、安易に「アメ・コミ」という言葉を使ってし…

悪魔のミカタ〈2〉インヴィジブルエア(うえお久光著)

ジャンル:ミステリ 第八回電撃ゲーム小説大賞銀賞受賞作の続編。 探偵の動機付けが納得しがたいという前作の欠点は、第二作であるがゆえに、シリーズ全体に目を向けさえしなければ解消されていると言って良いだろう。探偵の動機の問題をこの話の内部に入り…

悪魔のミカタ パーフェクト・ワールド(平日編)(うえお久光著)

ジャンル:ミステリ 第八回電撃ゲーム小説大賞銀賞受賞作の続編。上下分冊の上巻だが、とりあえずこの一冊をレビューしてみたいと思う。だって下巻買いたくないんだもん。これつまんないから。 つまらない理由は一つ。このシリーズの最大の魅力(だって送り…

クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い(西尾維新著)

ジャンル:ミステリ 別にタイトルとか作者名とか手打ちしなくても山本のからコピペすりゃいいや、とか思ったわけではない。コピペしたけど。評価自体は俺の方が一点低いけれど、別段彼の評価を妥当ではないとも思わない。たまたま書こうと思ってたネタが被っ…

悪魔のミカタ パーフェクト・ワールド(休日編)(うえお久光著)

ジャンル:ミステリ 上下巻にした意味何? 上巻の内容60ページにまとめて一冊にすりゃいいじゃん。 単独ではそれなりに面白かった。あやしげな薀蓄の続出する剣戟シーンとかちょっとかっこいいし。犯人が罠にかけられるくだりも相変わらず上手いし。 けど、…

クビシメロマンチスト 人間失格・零崎人識(西尾維新著)

ジャンル:ミステリ あいも変わらず優等生な出来。トリックは早業殺人と事後共犯と叙述トリックの組み合わせで上手く出来てるんじゃないかしら。豪快な物理トリックを使わない限りどうせ謎解きに必要な諸要素なんて大した量になるはずないし。 で、その謎解…

煙か土か食い物(舞城王太郎著)

ジャンル:ミステリ 良く出来ているじゃないの。 厳密に言えばこの手がかりだけじゃ犯人特定できないんだけど、まあ、そんな世知辛い事はいいじゃない。ドラえもんの見立てとか点字とかのアホらしい謎が、出る片端から解かれて行くのはストレスが溜まらなく…

コズミック流、水(清涼院流水著)

ジャンル:ミステリ コズミック!(感嘆詞) ついに読みましたよ清涼院。思いのほかまっとうでビクーリ。それでも大馬鹿でさらにビクーリ! 伏線→回収は読書の快感の一つなのであり、特に本格ミステリはそれに頼り切ったジャンルだとは言えるのだが、それだけに徹…