天剣王器(海羽超史郎著)

ジャンル:ファンタジー  
 電撃ゲーム小説大賞第七回選考委員奨励賞受賞作。
 「魔導」「魔術」「魔法」と区分したがるのは〈オーフェン〉ですか、とか〇〇を要する環境制御機構って同じ第七回のアレと被ってますね、とか意地の悪いことを思ってみたりもしたけれど基本的にはまあまあの出来。
 きっちり作りこまれた背景世界を語りたかったそうだが、結局少年と少女の恋愛譚に堕してしまっている。恋愛譚の次元では十分に説得的だが、背景世界を語りたい欲求に時折負けて不必要な設定語りがところどころに入り込んでいるのはご愛嬌か。
 恋愛譚にしか落とせないなら世界設定なんて語らなければいいのに。この設定で擬似イベントに走らないのはなんとも勿体無い限り。
 尚、受賞後第一作『ラスト・ビジョン』のレビューは本誌2094号に掲載されている。そちらも併せてご覧いただければ幸いである。

電撃文庫 2001年7月発行