シガレット・ヴァルキリー(吉川良太郎著)
ジャンル:SF
最高傑作。
この人の最大の欠点は、小説として綺麗に纏まりすぎている点にある。例えば野阿梓やディレイニーが良くやるような、ストーリーの裏側で思弁を展開するタイプのSFは、小説の表層を敢えて壊しておく事によってその裏側を仄見せるべきなのだけれど、この人はそれが全く出来ていない。小説を壊す度胸がないんだと思うのだけれど、それがなんとも不満だった。
この作品は裏側の仕掛けが存在せず、その分ただの綺麗に纏まった中篇に仕上がっていて好印象。
でもね。あとがきでバタイユって言わなくなったと思ったらラカンとか言い出すのはやっぱりホントにクソダサいのでやめてください。漱石を引いたのは良かったのにね。はあ。
徳間デュアル文庫 2002年2月発行