ブロークン・フィスト 戦う少女と残酷な少年(深見真著)
ジャンル:ミステリ
ミステリの本義は推理であり、そしてその要は勿論驚天動地、空前絶後の大トリックだ。
その一点さえ神懸かっていれば、たとえ他がどんなにヘタレていようと本質的にはかまわない。
たとえ作者のマニフェストとは裏腹にヒロインが守られているばかりでも探偵の設定があまりにあまりであってもミスリーディングが腐れていても長過ぎて興ざめな格闘シーンが終盤に置かれていても。
いくつかの記述を鍵に作品世界の位相をずらし、「完全な密室殺人」を成立させる反則すれすれのトリックは、この作品が傑作バカミスである事をどこまでも保証してくれるはずだ。
拙い部分は多々あるけれど、このトリックをやっちまった度胸には素直にまず感服。あとは、このトリックのインパクトをきっちり最大化させる構成が取れていれば言う事はなかったのだが、それは流石に高望みか。
今後もこの路線のトリックを連発してくれるのだろうか。実に楽しみである。
富士見ミステリー文庫 2002年1月発行