並列バイオ(秋口ぎぐる著)

ジャンル:SF  
 第十回富士見ファンタジア小説大賞審査員特別賞受賞作。

 秋口ぎぐるの作風を一言で言えば、小洒落ている、というあたりになるだろう。
 このデビュー作もそんな話だ。
 「巨人機関」「MS」「進化論者」などの造語とガジェットは確かに格好良いし、/や=を助詞・接続詞代わりにする文体もまあ多少読みにくいが狙った効果をそれなりに発揮できている箇所もある。
 ただ、やはりこの人の作品は「小」洒落ているだけであって、本気で洒落のめす事がまるで出来ていない。洒落る事以外に突き詰められたものもない。
 それはMSの並列接続よりもオンナを選ぶ主人公の惰弱さ、結局世界観レベルでの変革が描かれない半端さなどに現れてしまっている。そしてこういった欠点は今もって改善されていない。
 もう一皮、剥ける余地はあるはずだ。

富士見ファンタジア文庫 2000年1月発行