イリヤの空、UFOの夏 その4(秋山瑞人著)

ジャンル:SF  
 キタ━━(゚∀゚)━━( ゚∀)━━━(  ゚)━━(  )━━(゚  )━━(∀゚ )━━━(゚∀゚)━━!!!!!
 日本で最もファッキンな小説家、秋山瑞人センセイがやってくださいました。伊里野か世界か! 選んだったらんかい! しまいにゃごめんなさいのお手紙届くぞ!?
 泣かせの技術の集大成ではあります。泣かせ系の『黒死館』とかいちお口走っときますか? 泣かせの技術についてまったくもって容赦なく追求した、修練の賜物ではあるでしょう。
 まあ泣かせの技術ってのはアレだ、善意の人間の最善を求める努力が悪い結果を次々と生むって奴。だから人々はみんな重大な局面では善良で、物分りがよくて、そうでない局面でだけ頑固で悪い。頑固な悪さの憎むに足らなさ、つまるところ因果の不釣合いって奴で人は泣くわけでさ。ハッピーエンドらしき結末だってその一環っしょ。伊里野の不幸の上の浅羽の幸福の据わりの悪さ。
 ところでこれって『猫の地球儀』とどう違うんですか?
 周到に準備された、悲劇しか起こりえない世界で、起こるべくして起こった悲劇で女子供オタクオッサンの紅涙搾り取ってナンボ、でしかないのは明らかだと思うんだけど。まさか楽が死に、幽の行方も分からず、ただ、幽の夢だけは叶った『猫』のシビアさが『イリヤ』にはない、とでも? プッ。それは君、プッて奴だぜ。
 結局のところ手口は変わんないじゃん。地球へ行きたいという夢、伊里野が好きだという想い、そんな些細で許されたってかまわなそうな主人公のキモチが不釣合いなほど重くて悲劇的な何かを呼び込む、その違和感以外の何があるさね。
 つまるところ『猫』と違う派の人々は、結末の違和感のなさを責めているのだろうけれど、そんなのはただ単に最早手の内が割れちまった作家が一人いるってだけの事じゃないか。
 なんつーかなあ、邪悪だよね。ハッピーエンドがお気に召さない読者の皆様も。
 尚、末真に萌えるほど健全で正義派な俺様は、だから次にこう言う。
「やっぱ『ビートのディシプリン』にしとくんだったな!」と。
電撃文庫 2003年8月発行