十角館の殺人(綾辻行人著)

ジャンル:ミステリ  
 確かに綺麗などんでん返しだが、当時の衝撃作、という感は拭えない。
 それこそ、「携帯は?」の一語で崩壊するトリック。ゴシックな館や超人的な名探偵への躊躇も隠し切れない。動機もあまり浮世離れしていない。
 ただ、そこから本格推理の置かれていた苦境が逆説的に浮かび上がってくるのは確かで、その中でこの作品を書き上げた気概も評価に値するだろう。
講談社文庫 1991年9月発行