エナメルを塗った魂の比重 鏡綾子ときせかえ密室(佐藤友哉著)

ジャンル:ミステリ  
 なんですかこれは。
 何を楽しめばいいんですか?
 前半こそ『贖罪の教室』ばりの凄惨ないじめがカタルシスですがそのカタルシスは後半に至ってなんかもうどうでも良くなっちゃうし。
 やりたい事はわからんではないけどね。エナメルの薄皮一枚だけで魂ってのは覆われていて、その被覆の内側には実は何もない、みたいな事が言いたいんでしょ? そのためにそれこそ薄っぺらくスーパーフラットなデータベースからの引用を鏤め、作中での被害者−加害者、犯人−探偵のような固定的な関係性を何度もひっくり返してるんでしょ?
 だったらもっと上手くやれよ。東浩紀も言っていますよ、「後は技術だけだ」と(嘘)。
 とりあえず現代がデータベース型社会である事を認めたとしたら、そこで価値を持つのがそこからの引用を如何に巧みに組み合わせるかの技術である事は明らか。その自らの社会観を自ずから裏切っているこの構成のなってない、トリックの破綻した、伏線のふの字もない小説に、一体いかほどの価値があるのでしょうか。
 どなたかてぃーちみーぷりーず。


講談社ノベルス 2001年12月発行