眠り姫(貴子潤一郎著)
ジャンル:その他小説
ああやっぱりな、という感じの貴子潤一郎の短編集。
「眠り姫」
いや、この言葉を使う日が来るとは思わなかった。「こんなのファンタジーじゃねえ!」
前回もちょろっと書いた事だけれど、幻想文学の存在意義は寓話性にあるのではない。描かれる幻想それ自体の魅力、それが我々自身の生にとっていかほどの教訓を与えてくれるかとは無関係な魅力こそが幻想文学の存在意義なのだ。
そのようにあるべきファンタジーの説話論的な構造を抽出して現代小説に仕立て直して外伝と称せる神経が俺にはよくわからない、というかこの人やっぱりファンタジーとかどうでもよかったんだろうなと思うばかりだ。
具体的なものから普遍性に逃げ込む惰弱な精神性ばかりが鼻についてどうにも始末に困る。
「汝、信心深き者なれば」
当たり前にカタルシスはありますね。以上。
「さよなら、アーカイブ」
えーっと、読者舐めすぎと違うかな?
スタニスワフ・レム、ホルヘ・ルイス・ボルヘスetcetc。
架空の本の書評、というのは正直よくあるアイデアでさ。それをただの虚言の罪としてしか扱わない底の浅い展開はうーん、なんだろう、架空書評に失礼だよ。
嘘から真実の愛が生まれたっていいじゃない。ハッピーエンドじゃないのが気に食わないとも言う。松田さん萌え。
「水たちがあばれる」
だからSF的意匠ってのはただのメタファじゃないんだってばよ。
土ワイがやりたいんならSF的意匠なんて借り出さないでやりなさい。
まあ、よくできてますけど。それだけ。他の作品もそう言う感じですが。
『塩の街』を読んだ時も思ったけど、バラードってひょっとしてこの程度のものだったのかな。不安だ。読み返さな。
《探偵真木》
具体的なものにきっちり寄り添っていて、だから一番読んでいて苛立たなかった。
キモいラノベオタどもに俺様の洋楽・洋画知識を見せ付けてやるぜ、という臭みを感じなかったはずはないけどな。
富士見ファンタジア文庫 2004年10月発行