黒白キューピッド(中村九郎著)
ジャンル:SF
これすごいよ。
実体-描写モデルから完全に離脱して言葉と言葉が詩的連鎖だけで繋がっていく殆ど韻文なスタイルを選択してるのに、キャラクター小説の範疇は全然逸脱しない。
一貫しない思考、語り落とされた妄念、怯えと媚び、それから恋。思春期の少年少女を形作る殆どの要素が叩き込まれてるのに、まるで押し付けがましくなく能天気な爽やかさだけが胸に残る。
言い換えとく? すごく読みやすい。あとメイジすっげー可愛い。加藤はさらにすっげー愛しい。特に加藤だなあ。幻滅するためだけに走る男の子。そんな彼の秘密が明かされるくだりは、もう涙なしには読めないっす。
ついて来れないダサ坊は一生『JAJA姫武遊伝』でも読んでろとか思わず口走りたくなる、俺らの世代の、俺らの世代による、俺らの世代のための何か。
以下余談。えー、メイジのイラストがあまりにもココ(『マーメイドメロディーぴちぴちピッチ』)そっくりです。それがまた死ぬほど可愛い。
『ぴっち』とはなんか同時代性があるのかもとは思うが流石にネタがデカ過ぎるのでまた今度。
集英社スーパーダッシュ文庫 2005年4月発行