ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ(滝本竜彦著)

ジャンル:SF  
 まず技術的な話をすれば、戦闘美少女の子分になって悪の権化と戦うと言うメインモチーフの使いまわし方が実に上手い。上遠野浩平並み、と言っては褒め過ぎだけど、そう言うレベル。実に自然に大きな物語と小さな物語がメインモチーフを通じてリンクしていて、感心させられる。
 それはそうと大きな物語能登、小さな物語=絵理と言う構造はフェミニズムの人に読ませると何を言うのかしら。男の子の実感としては非常に良く分かるんだけど。女に現を抜かしてる奴はバカですよ、ええ。
 しかしバカは本能的に賢い生き物なので(「マチルド、君はなぜ怖いんだ。ほんとうに勇気があるんなら認めてしまうんだ。君が、いや、僕たちが彼ら以下であるという事実を」と矢吹駆も言ってるじゃない?)、自分達には女に現を抜かすしかないと理屈以前で分かっているはずなのだ。
 この小説はその理屈以前の判断を言語化する試みでもあり、一定以上それに成功しているとも思う。それは、決断としての恋愛至上主義として表現されている。その決断は勿論炸裂する観念を生き切った能登に、それでも平凡な肉の幸せを羨望する事を強要する/せざるにいられない苦味を帯びてはいるのだけれど。
 良い話です、が。
角川書店 2001年12月発行